【こんな症例も治りますシリーズ 442】 犬の原因不明のセキ も適切な診断と治療で治します

ワンちゃんがヒドイ咳をしている姿です。
似ているので、よく間違えられるのは、『 嘔吐しようとしている姿 』です。
たしかに、初めて見た時は区別できないかもしれませんが、ヒドイ咳だと『軽い咳をする』事が多い、と言う点が鑑別点です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3koHUqy

 

犬  1歳半、オス(未去勢)

 

【 1か月前からセキが止まらないので、他院に行ったが治らない 】とのことで来院されました。

 

 

◆◆ 飼主様からお話を伺ってると、このワンちゃん、1か月前からセキが始まり、そのうち夜になるとひどくセキ込むことから、近隣の動物病院に行ったところ、「気管虚脱」と診断されたとのこと。

■ そちらの病院で、気管支拡張剤を処方されましたが、その後も症状が治らないことから、ホームページを見て当院に来院されました。

 

 

 

■■ 犬の咳はさまざまな原因で生じますが、よくみられる原因としては、感染症、慢性心不全、心肥大による気管支の圧迫、気管虚脱、 気管支虚脱などがあります。 慢性鼻炎による後鼻漏も、咳の原因 になります。

 

 

■ さて、このワンちゃんに対して、当院でもきめ細かい身体検査、血液検査、レントゲン及び心エコー検査を行ったところ、軽度の心雑音、発咳試験(陽性)、軽度の気管虚脱、肺動脈弁逆流が認められました。

 

 

 

 

■ 当院では、POMR(問題指向型医療記録:Problem-Oriented Medical Record)に基づいた論理的診断法を用いることで、漏れのない診断と適切な治療を心掛けています。

 

 

● 今回の場合、セキの原因は感染症か心臓による可能性が考えられましたので、それぞれ更に詳細な検査を進め、鑑別診断(別の疾患との鑑別確認を行い、確定診断を得る診断方法)を行いました。

 

 

● まずは、咽頭スワブ(ぬぐい液)で呼吸器パネルの遺伝子PCR検査を実施し、ウイルスと細菌を同定(どの原因菌か確定する事)したところ「ボルデテラ」という細菌が検出されたことから、『 伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ) 』と確定診断をしました。

 

 

■ 抗生物質・消炎剤等の治療を始めて2週間後、再度、来院いただき経過をお聞きしたところ、『 あれほど良くならなかったセキは、ほとんど無くなった 』と嬉しそうに飼主様がお話くださいました。

 

 

 

■■ セキの主な原因は感染症と判明しましたが、今回の検査でわかった心臓機能については、また改めて詳細な検査を行いたいとのことでした。

 

 

※ 肺炎や気管支炎によっても心臓の血行への影響が出ますので、今回の気管支炎が治った事で心機能障害が治っている可能性もあります。

 

 

■ 実は、ペットショップさんなどから購入して来たばかりの子に、この『ケンネルコフ』の咳の症例は多いのですが、この子のように1歳半になってから発症したケースは珍しいのです。 前医の先生が、その事を念頭に置いて診断した結果、感染症を検査しなかった事は、責められない事でしょう。

 

 

### この子のケースを紹介したのは、思い込みや混乱している診断や症状を『 丁寧に論理的診断方法を用いて適切な治療を行うと、助かるケースが多い 』、と言う事を御理解頂きたくて情報提供致しました。

 

 

 

■ 何か気になる点がありましたら、当院にお気軽にご相談ください。

 

 

獣医師 泉 政明

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